「将棋を指してみたいけどよく難しいと言われる。その理由は?」という疑問を持っている人に向けての記事です。
将棋が難しい理由3つを、具体例を交えて解説していきます。私は現在将棋ウォーズ1級の90%くらいなので、初心者~級位者向けの内容です。
難しい理由と、その理由を踏まえて将棋の勉強の取り組み方で気を付けた方がいいことも1つ紹介しました。よかったら参考にしてください。
将棋難しい…。けど
楽しい!
将棋が難しい理由
将棋が難しい理由、特に私が感じているもの3つです。
- 覚えることが多い
- 覚えたことを実戦で使うのが難しい
- 序盤、中盤、終盤での難しさの質が違う
難しいというとネガティブに聞こえますが、「ここが面白いところ」とも言い換えることが出来ます。紙でいえばおもてとうら、表裏一体の関係なのかもしれませんね。
難しい理由1:覚えることが多い
初心者同士なら、飛車が成りこんで、うっかりに気を付けて、基本的な詰みがわかれば十分楽しめます。でも更に上達したい場合(初段目指したいなど)は、
- 戦法
- 手筋(詰みのパターンも手筋の一種)
などを覚えていく必要があります。これらの種類が多いです。戦法と手筋の種類についてみていきましょう。
どれくらい多いんだろ?
戦法の種類
1つの戦法を集中してやればいいのでは?という意見はよくありますし、私もその意見に100%同意します。でも、「1つの戦法に特化した」としても1つでは済まないのです。
将棋の戦法は主に居飛車・振り飛車に分かれますので、それぞれの難しさを説明していきますね。
振り飛車の難しいところ
振り飛車は飛車を振る位置で名前がついています。
- 中飛車(飛車を5筋に振る)
- 四間飛車(飛車を左から4番目に振る)
- 三間飛車(飛車を左から3番目に振る)
- 向かい飛車(飛車を左から2番目に振る)
※左から○番目はこちらが先手番のとき
例えばこの中で三間飛車1本に絞ったとしても、その中でまた戦法が分かれます。
- ノーマル三間飛車(角道を止める三間飛車)
- 早石田
- 石田流
- 三間飛車穴熊
- トマホーク(対穴熊用の戦法)
- 真部流
1つの戦法から派生していくのね。
また、序盤で劣勢(負け)にならないために相手の戦法によっても戦い方を変えていく必要があります。
- 相手が居飛車急戦のときは、すぐに戦いが始まるから振り飛車側は美濃囲いに囲うのが限度。角と桂馬の美濃崩しの攻め筋は気をつけて!
- 相手が持久戦(じっくり戦う)のときは、こちらも穴熊にするか、戦いを早めに仕掛けるかの選択が必要。
- 相振り飛車になったら、お互いに中飛車・三間・四間・向かい飛車で序盤が分岐します。
ゆえに1つの戦法といっても覚えることがたくさんあります。
今は序盤の話ですが、中盤以降の駒を捌く技術も難しい点の1つです。
序盤を理解する上で、私のおすすめは『将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編』です。初版が増補改訂版で2018年初版発行ですが、今読んでも十分すぎる内容です。
『序盤』『定跡』などの言葉の解説や、昭和30年代はこんな時代だった!なんて話もあり、とても勉強になりますし面白いです。
居飛車の難しいところ
居飛車には5大戦法と言われるものがあります。
- 矢倉
- 角換わり
- 一手損角換わり
- 横歩取り
- 相掛かり
他にも戦法はたくさん!
- 雁木
- 右四間飛車
- 袖飛車
居飛車の難しさは、「この戦法で行こうよ!」とこちらが言っても、相手は拒否することが出来る点です。相手の手によって別の戦法になる可能性があるので、5大戦法を一通り知っておく必要があります。最初の数手の駆け引きで戦法が決まります。
ねえねえ、矢倉でいこうよ~(☗7六歩)
いやよ、横歩取りにしましょ!(☖3四歩)
・・・。
よって居飛車も覚えることはとても多いです。
↓こちらも上野先生の本にくわしく書かれています。
将棋ウォーズ初段になったら居飛車もやってみようかと思っていたので、本棚にあるこの本を読んでみようと思います。
手筋の種類
将棋には手筋と言われるものがあります。柔道でいう「有効!」と言われる小技でしょうか。
手筋が実戦で使えるようになると、中盤で戦況を好転させることが出来ます。部分部分の局面で使えるものなので、居飛車・振り飛車は関係ありません。
終盤であれば、手筋は相手玉を最短で追い込むための技ですから、詰将棋で詰みのパターンを覚えるほど勝ちやすくなります。
中盤の手筋はどれくらいあるかというと、たくさんあります(笑)。主なものを第1図に示します。
第1図
これらの手筋は当然相手も使ってくるので、手筋を食らわないように相手の手を見ながら指し進めていく必要があります。
↓こちらは渡辺明先生監修の手筋の本です。王道です。
↓こちらは遠山先生の歩の手筋の本ですが、第3章は三間飛車特化&第4章は相振り飛車特化なので、三間飛車党にはよだれが出る内容になっています。。
難しい理由2:覚えたことを実戦で使うのが難しい
次に難しいのは、覚えたことを実戦で応用することです。特に手筋は実戦で経験をしていかないとなかなか使えません。
理由は、
- 覚えた手筋が実戦ですぐに出てこない(忘れたころにやってくる)
- 初心者~級位者は9×9マスの盤面全てを見渡すのが難しいので、戦いが起こっている付近以外で手筋が使えるのを見落としたりする
- 同じ手筋でも周りの状況によって効果が変わってくる
3番目の「同じ手筋でも周りの状況によって効果が変わる」例を桂馬の頭に歩をたたく手筋で説明します(よく出ます)。攻めに困ったら桂頭と角頭を攻めよと言われるくらい。
第2図では「☗7四歩」と打てば桂馬が取れます。
第2図.☗7四歩で桂馬が取れる
ところが駒の配置が1つ変わるだけで指し手の意味もだいぶ変わってきます。
下図の第3図は、第2図と比べて「相手の6五の歩がない」だけの違いですが、「☗7四歩」と打つと、「☖6五桂」と跳ばれて桂馬を取ることは出来ません。場合によっては、後手の桂馬の攻めを加速させてしまう場合もあります。
第3図.☗7四歩と打っても、☖6五桂と跳ばれてしまう
この場合、更にその先を見越していれば桂馬が逃げられても得をすることが出来ます。「☗7四歩」「☖6五桂」と跳ばれても、「☗7三歩成」のと金作り+飛車取りが実現しますね。(第4図)
第4図.桂馬を逃げられても「と金」作りがある
同じ手筋でも周囲の駒の配置状況によって手の意味が全然変わってきます。そこがまた面白いところなんです。
もっと上達すると、桂頭(桂馬の前のマス)を守っている相手の駒をずらして攻める手も指せるようになってきます。第5図では単に「☗7四歩」だと銀で歩を…。
第5図
「☗7四歩」の前に「☗6四歩」と打ちましょう。(第6図)これはたたきの歩の手筋ですね。
第6図
銀でこの歩を取ったとしても、逃げたとしても、桂頭の守りから銀は強制的に外されてしまうため(第7図)
第7図.歩の効果で銀は7四の地点を守れなくなる
桂馬を取ることが出来ます。(第8図)
第8図.桂馬を取ることが出来る
歩1枚でも使い方によっては大きな戦果を上げることが出来ます。(強い人は歩の使い方が上手いです)また、自分がこのように攻める狙いがあるということは、相手も同じように攻める可能性があるということです。
「知って、試して、失敗して、改善して」を繰り返して手筋の使い方が身についていきます。
僕のターン。秘技!十字飛車!
トラップカード発動!王手飛車!
・・・ひどいよ~。
先を考えながら指すと強くなるわよ。
難しい理由3:序盤、中盤、終盤での難しさの質が違う
序盤、中盤、終盤の難しさの質が違うということは、それぞれの目的が違うということでもあります。
この辺りは『みるみる強くなる将棋入門 序盤の指し方』に詳しく書かれています。
この本も好きです。定跡の丸暗記よりも将棋の基礎体力をつけようと書いてあり、一手一手意味のある手を指していけるようにいろいろ工夫がなされています。
改訂版は白の表紙ですが、その前は黄色でした。目次はほぼ同じなので中古で黄色の本を買ってもいいかもしれません。(私は黄色を持っています)
序盤の難しさ
序盤で有利な陣形に組めると、中盤以降戦いやすくなりますし、逆に作戦を間違えると序盤で不利になることもあります。
例えば、第9図は先手が石田流を組もうとしているところです。対して後手は金銀で飛車が突破されないように守っています。
第9図
この後「☗7七桂」と跳ねていってもいいのですが、飛車の動ける範囲が小さくなって捕まる(=序盤で劣勢になってしまう)リスクがあるのですぐに桂馬は跳びません。(私は飛車が捕まった経験が何度もあります・・)
四段の方との駒落ち対局で教えてもらいました。
知識がたくさんあるほど序盤は有利になります。
中盤の難しさ
中盤もとても難しいです。
- 持ち駒が増えると、指すパターンが一気に増える
- ここは攻めるべきか、守るべきかわからない
- 攻めているつもりが、攻めになっていないことがある
- 守っているのに、守りになっていないこともある
- 攻め方がわからないから時間が削られていく・・
私は有段者(=強い人)と指す機会もありますが、有段者はなかなか攻めてきません。私がしびれを切らして攻めて、ミスするとそこを起点に形勢がガタッと傾いていきます。例えて言うと、草陰から獲物を狙っているトラ。飛び掛かられたらもう逃げられません。。(悪手を指した方が負けのゲームですから棋理(将棋のことわり)にかなっていますね・・)
終盤の難しさ
- 詰みがあるかどうかを見極めるのがまず大変
- 詰将棋は詰むとわかって解くが、実戦では何手詰とは教えてくれない
- 読み間違えて詰みを逃すと、逆襲がとても怖い
- 自玉(自分の王様)も危険で相手玉も詰みそうだと、訳がわからなくなる
実戦は3手詰めでも緊張します。1マスでも抜けもれがあると「やってもうた~!」という気持ちになります。
やり直しきかないもんね・・
スリリングで面白いですけどね。
関連して、初心者おすすめの詰将棋の本を紹介しています↓
将棋の勉強の取り組み方で気を付けた方がいいこと
将棋の勉強で一番気を付けた方がいいことは、自分に合ったレベルで難易度を段階的に上げていくことです。これは(将棋以外の)勉強法の本にも書かれています。理由は、難しすぎると疲れちゃうから。そして楽しくありません。
難しいことに歯を食いしばって挑戦するのはすごいことですが、3か月くらいが限度のようで、ストレスがかかって継続が難しくなってしまいます。一番良い状態は、本人が今勉強するのが楽しいと感じること。楽しいのにストレスで止める、という人は当然いませんよね。
↓勉強法についてはこの本を参考にしています。将棋の本ではないのですが、将棋の勉強尾に通じるものがあったので紹介しています。
楽しいから将棋やる量へらす!
通訳すると『楽しいから(将棋やりすぎた結果、宿題忘れてて今日は)将棋やる量へらす』です。
将棋でよく目標とされるのは「初段になること」です。早い人は数か月という人もいるようですが、実際あまりいないと思います。一般的には数年と言われます(私は7年かかりました汗)。途中で歩みを断念してしまったら目標は達成できませんから、無理なく楽しく継続することが一番大事です。
ロールプレイングでは最初は城(スタート地点)の周りに弱い敵しかいません。自分も成長しながら敵もだんだん強くなっていきます。敵を倒せるから面白い。製作者もそのように意図して創っています。
だからはまっちゃうのか~。
しかし将棋の場合は、弱い敵だけでなく強敵もたくさん混ざっています。
- 3手詰の本といっても難易度が違います
- 戦法書(定跡書)は有段者向けに書かれたものが多いです
- オンライン対戦を試したらボロボロにされて「もうやらない!」という人も
途中で将棋を断念してしまう原因の1つではないか、とも思っています。私も買った3手詰の本が難しすぎて自分は将棋に向いてないのでは?と思ったこともあります。難しい本が悪いということではなく、自分の棋力(将棋の強さ)に合った勉強方法が大事ということですね。
一例ですが「将棋ウォーズを始めてもストレスのない棋力はどれくらいか」をぴよ将棋を使って調べてみました。第10図はそれぞれ10局の平均値です。グラフの縦軸はぴよ将棋で解析した時の強さの指標(0点~100点)をとっています。この結果からだと、ぴよ将棋の7~8級に勝てるようになったら将棋ウォーズに進むのがいいかもしれません。
第10図
将棋が難しい理由のまとめ
この記事では、
【将棋が難しい理由】
- 覚えることが多い
- 覚えたことを実戦で使うのが難しい
- 序盤、中盤、終盤での難しさの質が違う
【勉強の取り組み方で気を付けた方がいいこと】
- 楽しさが継続するように自分の棋力に合った勉強をする
ことを紹介しました。
「他の趣味が出来たから将棋をやめる」ならまだいいですが、「つまらない、面白くないからやめる」だとちょっともったいない気がします。
どうしたら楽しく強くなれるかな、ということをもう少し考えていきたいと思います。
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