自宅にある3種類の将棋の駒の密度を計算しました。
黄楊(つげ)の駒、もう1つの木の駒、プラスチック駒の3種類です。
黄楊の駒の密度は0.86[g/cm3]となり、一般的な黄楊の木の密度と同等であることが確認できました。
また密度の計算結果等から、もう1つの木の駒は樺(カバ)、プラスチック駒はABS樹脂と予測しました。
また、密度の計算の仕方についてもわかりやすく解説しましたので、ぜひ読んでみてくださいね。
密度の計算の仕方
最初に密度の計算の仕方を解説します。
密度の計算式
密度は質量を体積を割ることで求められます。
\(密度=\frac {質量}{体積}\)
単位は
\(\frac {質量}{体積}=\frac {g}{cm^{3}}\)
なので、[g/cm3]です。
例えば、冷蔵庫の豆腐の密度を求めてみます。
質量は160gです。(第1図)
第1図
体積=縦×横×高さなので、
豆腐の体積=7[cm]×7[cm]×3[cm]=147[cm3]です。
よって、
豆腐の体積=\(\frac {質量}{体積}\)=\(\frac {160}{147}\)=1.1[g/cm3]
となります。
計算方法をド忘れしたら?
質量÷体積だっけ?体積÷質量だっけ?と覚えたての頃はよく度忘れしました。
テストの時は緊張しているのでなおさらです。
こんなときの対処方法を2つ紹介します。
その1:密度の単位を思い出す
単位は[g/cm3]です。
これは
\(\frac {g}{cm^{3}}\)
という意味ですから、「重さ÷体積」であるとわかります。
単位も忘れてしまった場合はイメージで思い出す
「密度が高く」なると重くなるイメージがありますね。
もし密度の単位が\(\frac {体積}{質量}\)だとしたら、質量が増加すると分母の質量が増えるから、密度は小さくなってしまいます。
それはおかしいから逆と考えることが出来ます。
将棋の駒の密度は?
それでは将棋の駒の密度を求めてみましょう。
黄楊(つげ)の駒、もう1つの木の駒、プラスチック駒の3種類の密度を求めてみます。
黄楊の駒の密度を工夫して求めてみる
黄楊の将棋の駒の体積はすでに求めました。
あとは質量を測定すれば密度が求められます。
うちには精密な秤(はかり)はありません。キッチンにある秤があるのみです。
秤の仕様を表1に示します。
表1.秤の仕様
名称 | デジタルクッキングスケール |
型式 | KD-812 |
最小表示 | 1g |
計量精度 | 0~500gまで:±2g |
まずは王将駒1つの質量を測定してみましょう。(第1図)
第1図
王将駒の質量は、5[g]です。
王将駒の体積は5.2[g/cm3]なので、
密度は、\(\frac {5}{5.2}\)=0.96[g/cm3] と計算できます。
とりあえず密度は求まったのですが、この数字はどの程度正確なのでしょうか?
表1に示すように秤の計量精度は±2[g]です。
これは、秤に5[g]と表示された場合、実際の質量は5[g]±2[g]ですよ、という意味です。
ということは、5[g]と表示されても王将の駒の質量は3[g]~7[g]の間だということになります。
これだと、王将の駒の密度は表2に示すように、0.58~1.34[g/cm3]の間ということになってしまいます。
これでは幅がありすぎて、測定した意味があまりありません。
表2.王将駒の密度
最小 | 計測値 | 最大 | |
質量[g] | 3 | 5 | 7 |
体積[cm3] | 5.2 | 5.2 | 5.2 |
密度[g/cm3] | 0.58 | 0.96 | 1.34 |
「それなら精密な測定器を買おう」というのも一案なのですが、限られた資源の中で知恵を絞るのも大切なことです。
材質が同じであれば密度は同じになります。黄楊の駒であれば40枚の駒の密度は同じとみなせます。(黄楊の木自体の密度分布は無視します)
全ての駒の合計質量を全ての駒の合計体積で割れば密度の誤差が小さくなります。
測定してみると全ての駒の質量は98[g]になりました。(第2図)
第2図
駒全部の合計体積は、113[cm3]なので、計量誤差も考慮して密度を計算すると表3のようになります。
表3.駒全部を用いて計算した密度
最小 | 計測値 | 最大 | |
質量[g] | 96 | 98 | 100 |
体積[cm3] | 113 | 113 | 113 |
密度[g/cm3] | 0.85 | 0.86 | 0.88 |
駒の密度は0.85~0.88[g/cm3]となり、大幅に誤差が小さくなりました。
計量精度2gよりも十分に大きな質量で密度を計算したためです。
他の駒の密度は?
もう2つ、将棋の駒の密度を求めてみましょう。
1つは黄楊とは別の木の駒、もう1つはプラスチックの駒です。
両方とももらった駒なので材質はわかりませんが、密度から材質を予測することは可能です。
密度を求めるのに必要な情報は「質量」と「体積」です。
質量は秤に乗せればすぐに測定できますが、体積は駒の6種類の寸法を測る必要があります。
寸法測定にかかる時間を計算してみます。
40枚の駒の6つの寸法を2種類(木の駒、プラスチックの駒)測定する場合、
40×6×2=480回、ノギスで計測しなければなりません。
「計測して数値をメモするのにかかる時間」が1回あたり20秒とすると、
全部計測するのに、480×20秒=9600秒=2時間40分 かかります。
まじめに1つ1つ測ってもいいのですが、もう少し効率の良い方法はないでしょうか?
3つの駒を見比べると、だいたい同じ大きさであることに気づきます。
第3図
それならば、駒の体積は黄楊の駒も、別の木の駒も、プラスチック駒もみな同じと仮定して、質量だけ測定して密度を求めてはどうでしょうか?
2時間40分を1分に時短できます。
厳密な精度を求めていないため、この方法でも成立します。
別の木の駒とプラスチック駒の質量測定はそれぞれ第4図、第5図に示します。
第4図.別の木の駒の質量測定
第5図.プラスチック駒の質量測定
各駒の質量、体積、密度は表4のようになります。
表4.駒全部を用いて計算した密度
黄楊の駒 | 別の木の駒 | プラスチック駒 | |
質量[g] | 98 | 65 | 142 |
体積[cm3] | 113 | 113 | 113 |
密度[g/cm3] | 0.86 | 0.57 | 1.25 |
計算結果の妥当性と駒の材質の予測
黄楊の駒の密度は計算で0.86[g/cm3]となりました。
一般的な黄楊の密度を調べてみると0.75~1.14[g/cm3]でしたので、計算結果はこの範囲内に入っており、妥当な結果と言えます。
次にもう1つの木の駒とプラスチックの駒の密度から、材質を予測してみます。
理由は、
- 将棋の駒の木の種類は主に樺、楓、オノオレカンバ、黄楊
- その中で密度が近いものが樺(計算結果=0.57[g/cm3]、調べた樺の密度=0.5~0.78[g/cm3])
- 色等の特徴も一致
しているためです。
- 密度が近い(計算結果=1.25[g/cm3]、調べたABS樹脂の密度=1.16~1.21[g/cm3])
- ABS樹脂の用途に、用途に文具、おもちゃなどがある
- 「新宿将棋センター謹製」の王将駒はABS樹脂である
です。
まとめ
この記事では、
- 密度の計算の仕方
- 将棋駒の密度の計算方法
を解説しました。
将棋の駒の体積を求めることはそうそう無いと思いますが、体積を求める過程でいろいろと工夫をしました。
参考にしていただけたらと思います。
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