将棋では強さを表すのに「レーティング」というものが使われています。(レーティングはチェスでもそれ以外の競技でも使われています)
- レーティングって一体何もの?
- 将棋でレーティング100の差があったらどれくらい勝率が違うの?
という疑問にお答えする記事です。100の差があるとレーティング高い方は勝率64%、低い方は勝率36%になります。
計算式を紹介して、具体的な数字で64%、36%の答えまで計算してみます。加えて将棋のレーティングの変化をシミュレーションしてみました。(Excelを使用)
なるべくわかりやすく記述しましたので、よかったら読んでみてください。
ひさびさに出てきたわ。数学の時間よ!
ゲロゲロ~~。
将棋のレーティングとは何か?なぜ必要なのか?
将棋のレーティングとは、将棋の強さ(棋力)を表す指標です。
1回の対局ごとの勝ち負けでレーティングは変動します。対局に勝てばレーティングは上昇し、負ければ下がります。
レーティングは絶対的な指標ではなく、周囲のプレイヤー(棋士)との相対比較として、数値の意味を持ちます。
- ×絶対的な指標:誰にも負けないパーフェクトな強さを100として、棋士がどこに位置するか数値にする
- 〇相対的な指標:棋士同士が戦って、どちらがどれだけ強いかを数値で示す
ですから戦っている集団が違えばレーティングの比較はできません。例えば「将棋クエスト」のレーティングと「81dojo」のレーティングを比較して強い弱いの判断、集団が異なるので出来ません。
将棋クエストは1700で初段、81dojoは1500で初段ですので計算に使っている係数も若干違うのかもしれません。
勝った場合、レーティングの上昇幅は、
- 自分より強い人と対局して勝てば大きく上昇します
- 自分より弱い人であれば少し上昇します
負けた時は
- 自分より強い人に負けた場合は、少ししかレーティングは下がりません
- 自分より弱い人に負けると大幅にレーティングは低下します
これが、レーティングを採用している理由でもあります。
例えば、小学生が腕相撲をしたとします。
- 小学1年生同士で戦って、勝率100%の1年生と
- 小学6年生同士で戦って、勝率5割の6年生と
どちらが強いでしょうか?
この情報だけだと判断が出来ません。1年生の中でダントツに強くても、6年生に勝てるとは限りませんし、勝率50%の6年生が勝率100%の1年生に負けるとも限りません。
50m走ならば、走った秒数という絶対的指標があるため、1年生だろうが6年生だろうが、秒数の少ないほうが勝ちです。
お互い戦って勝敗を決める競技、例えばチェス、将棋、サッカー、野球、バドミントンetc.などはレーティングで計算したほうが、より強さの比較精度が高いといえます。
将棋のレーティングの計算式と100の差がある場合の勝率
レーティングが100違う二人が戦った場合の
- 勝率と
- 勝負が決まった後のレーティングの変動の計算式
を具体例を通して見てみましょう。
レーティングの違う二人が戦った場合の勝率
Aさんはレーティングが1600、Bさんはレーティングが1500とします。その差は100ですね。
計算式を文字で表すので、文字の定義を先にしておきます。
答案用紙でも文字の定義はとても大事!
やらないと迷子になっちゃいます。
AとBが戦うとき、
- PA:Aが勝つ確率(→求めたい答え)
- PB:Bが勝つ確率(→求めたい答え)
- RA:Aのレート(この場合は1600)
- RB:Bのレート(この場合は1500)
とすると、以下の式が成り立ちます。
\(\frac {P_{A}}{P_{B}}=10^{(R_{A}-R_{B})/400}・・・式(1)\)
\(P_{A}+P_{B}=1・・・式(2)\)
※式(1)の400は一般的に400が使われているようです
式(1)にRA=1600、RB=1500を代入すると、
\(\frac {P_{A}}{P_{B}}=10^{(1600-1500)/400}\)
\(\frac {P_{A}}{P_{B}}=10^{(100/400)}\)
\(\frac {P_{A}}{P_{B}}=10^{0.25}\)
\(\frac {P_{A}}{P_{B}}=1.78\)
式(2)との連立方程式を解くと、PAは次のようになります。
PB=1-PAだから、式(1)に代入してPBを消去しています。
\(P_{A}=\frac {1.78}{1.78+1}=0.64\)
よってAの勝率PAは0.64(64%)、Bの勝率PBは1-0.64=0.36(36%)です。
勝負が決まった後のレーティングの変動の計算式
勝負が決まったあと、AさんとBさんのレーティングは勝ち負けに応じて変動します。
先に文字の定義です。
- RA:Aの試合前のレート
- RB:Bの試合前のレート
- RA‘:Aの試合後のレート
- RB‘:Bの試合後のレート
- K:定数(よく32が使われるらしい)
パターン1:Aさん(強い方)が勝った場合
\(R_{A}’=R_{A}+K×P_{B}=1600+32×0.36=1612\)
(→Aさんのレートは1600→1612になる)
\(R_{B}’=R_{B}-K×P_{B}=1500-32×0.36=1488\)
(→Bさんのレートは1500→1488になる)
※この場合はBさん→Aさんへレートが12移動します
パターン2:Bさん(弱い方)が勝った場合
\(R_{A}’=R_{A}-K×P_{A}=1600-32×0.64=1580\)
(→Aさんのレートは1600→1580になる)
\(R_{B}’=R_{B}+K×P_{A}=1500+32×0.64=1520\)
(→Bさんのレートは1500→1520になる)
※この場合はAさん→Bさんへレートが20移動します
将棋のレーティングの変化をシミュレーションしてみよう
レートがそれぞれ1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900の強さをもつ7人のグループに実力のレート2000の人(Fさん)が入って順番に戦うとします。
条件は次のとおりです。
・Fさんの初期レートは1500である
・Fさんと7人がそれぞれ順番に戦い、一巡したらまた同様に7人と戦っていく。200回対局をするまで繰り返す。
・レートが変動するのはFさんだけ。7人はずっと同じレートとする(計算が大変になるので)
・勝敗は乱数×レート差で決まる勝率で決める
・乱数はExcelのrand関数を使う
シミュレーションの結果が下図です。対局を重ねるに連れレートが2000に近づいているのがわかります。
シミュレーションの結果、200回の対局でFさんの勝率は84%でした(167勝33敗)。
1300~1900の人のレートの平均は1600だから、2000-1600=400。このレート差の時の勝率は91%。まあまあ近い感じかな?
ちなみに実力レートがR1600の人だと下図の赤いグラフになります。戦う7人のレートの平均は1600だから、勝率は50%になるはずですが、このときの勝率は46%でした。
負け越していますが、レートは1500→1600に上がっています。これは自分より強い人と戦うとレートが大きく上がることが影響していると考えられます。
将棋のレーティング100の差とは?のまとめ
この記事では、
- 将棋のレーティングとは何か?
- 将棋でレーティング100の差がある時の勝率
- 将棋のレーティングの変化のシミュレーション結果
を紹介しました。
できるだけ具体的に説明しました。
少しだけでも数学(算数)が好きになってくれると嬉しいです!
いやいや将棋ですから…。
・突き歩詰めのパターンとかマニアック過ぎますかね・・(あんまし人気ない?)
コメント