振り駒のやり方を解説しました。将棋道場やサロンへ行ったときに役立ててください。
また、振り駒の先手・後手の確率を実験によって確認し、計算に近い結果となりました。
加えて、駒を1枚落下させたときと、5枚まとめて落下させたときで駒の挙動が異なった点を考察しています。
合計3種類の実験(合計1050回振る)です。
数学の問題でよくある「太郎君と花子さんがコインを〇回投げました」はつまらないけど、現実の問題で考えると確率(数学)って面白いですよ!
前半は振り駒のやり方のお話!
後半は数学の確率のお話よ!
振り駒のやり方
振り駒は、プロの公式戦では記録係が実施しますが、私たちが道場等へ行って振り駒をする場合を想定しての手順を記載しています。
振り駒とは将棋で、先手・後手を決めるために実施するものです。
振り駒の基本的な方法
振り駒の基本的なやり方です。振り駒は駒を並べ終わった後に行います。
方法は以下の通りです。
- 目上の人または棋力が上の人が自分の中央の歩5枚を取る
- 手の中でシャカシャカ振って、盤の中央に落とす
- ”と金”より”歩”の枚数が多かったら振った側が先手、逆だったら振っていない側が先手
- 立った駒はノーカウント、”歩”と”と金”の枚数が同じだったら振り直し
- 振り駒に使った歩を初期配置に戻し、「よろしくお願いします」で対局開始
対局を始めるときはあいさつ大事ね。
振り駒のやり方がわからなくても大丈夫
私が初めて将棋会館へ行ったときのことです。
手合がついてカウンターの型から「●●さんと〇〇さん振り駒でお願いしまーす。」と言われたとき、
- どこの席でやるんだろうか
- スムーズに進めないと相手に悪いかな
など緊張して、振り駒をどうしたか覚えていません。
そんな時は、相手にお任せしましょう。
慣れている人なら振り駒してくれますし、相手も初めてだったらじゃんけんでも大丈夫です。
振り駒の確率
ここでは振り駒の確率について計算と実験の結果を説明します。計算では先手の確率50%、後手の確率50%です。
実験内容は次の通りです。
3種類やったよ。
振り駒の確率の計算
実験の前に、計算したらどうなるか確認しましょう。
振り駒に歩は5枚使用します。表か裏かしかありませんから、それぞれ2通りの場合があります。
”歩”を☗、”と金”を☖とすると、
全てのパターンは
なので、2×2×2×2×2=32通りあります。
”歩”が表に出る枚数に着目して場合分けして数えてみましょう。表1に結果を示します。
表1
”歩”が0枚の場合は全部が”と金”。
”歩”が1枚の場合はどこか1つが”歩”です。
”歩”が2枚の場合はどこか2つに”歩”。
”歩”が3枚の場合は、”と金”が2枚ということ。先ほどの”歩”が2枚の場合の☗と☖を入れ替えればいいから同数の10通りです。
”歩”が4枚の場合は、”と金”が1枚ということ。これも”歩”が1枚の場合と同じで5通り。
”歩”が5枚の場合は、”歩”が0枚の場合と同じ1通りです。
合計すると、1+5+10+10+5+1=32で、全ての場合の数の32通りと一致しますね。
確率で表すと表2のようになります。
表2
”歩”の枚数 | 場合の数 | 確率 |
0枚 | 1通り | 1/32=3.1% |
1枚 | 5通り | 5/32=15.6% |
2枚 | 10通り | 10/32=31.3% |
3枚 | 10通り | 10/32=31.3% |
4枚 | 5通り | 5/32=15.6% |
5枚 | 1通り | 1/32=3.1% |
本当にこの通りになるのかなー。
実験で確認してみましょう!
振り駒の実験1(歩5枚を振り駒して、計算通りの確率になるか?)
実験をやる上で1番大事なのは「目的は何か?」ということ。2番目は「結果はどうなると予想されるか」、その後は「方法・実験等の作業」です。
「とりあえず実験してみました」だと、後でその実験データは何に使うのだっけ?と実験がムダになることが多いです。
今回の目的と予想はこうです。
5枚の歩を手に取って両手でシャカシャカぱらりんこ。振り駒を開始しました。
100回やるのに約30分かかりました。その時のデータが表3です。
表3.100回振った結果
”歩”の枚数 | 場合の数 | 確率(実験) | 確率(計算) |
0 | 1 | 1.0% | 3.1% |
1 | 17 | 17.0% | 15.6% |
2 | 32 | 32.0% | 31.3% |
3 | 31 | 31.0% | 31.3% |
4 | 16 | 16.0% | 15.6% |
5 | 3 | 3.0% | 3.1% |
いい感じかも。
500回やってみましょう。
表4.500回振った結果
”歩”の枚数 | 場合の数 | 確率(実験) | 確率(計算) |
0 | 15 | 3.0% | 3.1% |
1 | 97 | 19.4% | 15.6% |
2 | 148 | 29.6% | 31.3% |
3 | 154 | 30.8% | 31.3% |
4 | 72 | 14.4% | 15.6% |
5 | 14 | 2.8% | 3.1% |
計算に近い結果が得られていることが分かります。
また、先手後手の確率は表5の通りです。ほぼ50%ですね。
表5.先手後手の確率
場合の数 | 確率 | |
先手 | 241 | 50.6% |
後手 | 235 | 49.4% |
合計 | 476 | 100% |
この実験の結果から、
となりました。
予想当たりだね。
iphoneの動画機能のスロー再生を使うと、駒は非常に複雑な動きをするということがわかります。駒の落下に規則性はないのだろうか?と疑問に思ったので次の実験を行いました。
振り駒の実験2(歩1枚を自由落下させた場合)
目的と予想を記します。
最初”歩”が上だから、落ちた後も”歩”が上になりやすいかなぁ…。
実際やってみた結果が表6です。この実験は50回実施しました。
表6.”歩”を上にして1枚を自由落下
場合の数 | 確率 | |
”歩”が上 | 27 | 54% |
”と金”が上 | 23 | 46% |
あれれ?ほとんど50%だね。
その理由は落下の様子を見ていてわかりました。歩が盤に落ちた瞬間、跳ね返ってランダムな回転をして着地するためです。
落下後の表裏を決める要因は「最初の状態(”歩”が上かどうか)はあまり関係なく、盤にぶつかった時の回転の影響が大きい」ということがわかりました。
そうであれば振り駒の表裏に影響を与える因子は存在しないのでは?と思いました。因子がなければ、それはそれで公平性が保たれていてよいことですが。
原因不明だとちょっと悔しいのよね。
歩が5枚でも同様の実験をしてみました。
振り駒の実験3(歩5枚を自由落下させた場合)
次は歩5枚をまとめて落下させた場合です。歩は全部”歩”を上にして5枚重ね、自由落下させます。
前の実験結果から、盤に衝突した時に駒は跳ね返って回転するので、表裏の出る確率は50%になると予想しました。
この実験は500回行いました。その結果はこちらです。
表7.500回振った結果
”歩”の枚数 | 場合の数 | 確率(実験) | 確率(計算) |
0 | 3 | 0.6% | 3.1% |
1 | 23 | 4.6% | 15.6% |
2 | 78 | 15.6% | 31.3% |
3 | 122 | 24.4% | 31.3% |
4 | 179 | 35.8% | 15.6% |
5 | 95 | 19% | 3.1% |
”歩”が表の割合がすごく増えたよ。
ずっと観察してたらその原因がわかったわ!
歩が1枚だと、跳ね返ってランダムな動きをします。
でも歩が5枚あると、一番下の歩が盤に当たった時、跳ね返ろうとするのですが、次に落ちてきた歩に動きを抑えられてそのまま落ちてしまうケースが多くありました。
感覚的に言うとそれは当たり前かもしれませんが、その感覚を言葉と数字で表すのが実験でとても大切なことだと思います。
おまけ:駒が立つ確率
実験1(通常の振り駒の実験)で、500回振って駒が立った個数と確率は縦に立った場合が7.0%で、横に立った場合が5.8%でした。
表8.駒が立った確率
駒の向き | 個数 | 確率 |
縦 | 35 | 7.0% |
横 | 29 | 5.8% |
振り方にも寄りますが、思った以上に確率が高いと思いました。
駒が立たないように振るのも、振り駒のスキルかもしれません。。
振り駒の確率まとめ
この記事では、
- 振り駒のやり方
- 振り駒の先手後手の確率を計算と実験で確認
しました。
今回の実験では、同じ向きで落としたとき、駒の数によって結果が変わるという事実が分かりました。そしてその理由も。
もし、絶対公平な振り駒をするロボットを開発するなんてことになったら、もっと地道な分析もしていくのかもしれませんね。
将棋盤の上で1000回振ったら盤に小さなキズがついちゃったの(泣)
だからプロの対局では布の上で振るのね。
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